単利運用と複利運用

定年退職後、年金以外の収入がなくなると、頼りになるのは預貯金の取り崩し、もしくは利息など蓄えたものの運用になってきます。

預貯金を手元資金として運用しながら取り崩していくと、何年で底をつくか、そのための貯蓄には今から毎月いくらづつ積み立てていけばいいか、といった計算をするときにFPが使うのが、各種係数です。

6つの係数は複利計算用

金融商品には「単利運用」のものと「複利運用」のものがあります。今回の主役=「各種係数(6つの係数)」は複利運用で使うものです。

なぜ複利計算には「係数」が必要かと言えば、単利の計算は「想像できる世界」ですが、複利は「想像できない世界」だからです。どういうことなのか、順にお話ししていきましょう。

単利は単純

単利運用は元本のみに利息が付くものです。1,000万円の元本を年利3%で寝かせておけば1年で30万円の利息が付きます。

2年で、30万円×2=60万円

3年で、30万円×3=90万円

10年なら300万円。計算は簡単です。

複利は複雑

これに対して複利計算(運用)は元金が利子を産むだけではなく、産まれた利子もまた利子を産む計算です。単利運用より複雑です。

「雪だるま式に借金が増える」などの「雪だるま式」という表現がありますが、これが「複利」を端的に表しています。次の終価係数の計算で、複利の世界を体得してください。

終価係数

「終価とは」ゴール時点の金額

1,000万円を3%で20年間「複利」で運用したらいくらになるか。20年後の金額がゴールです。この計算に使われるのが「終価係数」とよばれる係数です。

係数は求める対象により全部で6つあり、電卓でも計算できないこともないのですが、係数があれば簡単です。比べてみましょう。

その前に計算過程を知っておくと後々楽なで、基本的な計算式を見ておきましょう。

「一気に20年分を計算をするのは難しい!」ですよね。まずは、1年運用した場合から順番に見ていきましょう。

まず1年運用すればどうなるかというと

1,000万円×3%(0.03)=30万円の利子が産まれます。元金と合わせて1,030万円です。

この計算は一般的には、

●1,000万円×1.03=1,030

という計算をします。では2年運用すれば・・・

●1,030万円×1.03=1,060.9万円

3年では・・・

●1,060万円×1.03=1,092.727万円

その次の年以降は、

1,000万円×1.03×1.03×1.03・・・・

となります。1.03×1.03×1.03・・・・の計算は2年の場合1.03の2乗、3年の場合は3乗、4年は4乗・・・・n年はn乗という計算式が成り立ちます。

1,000万円×1.03 n

電卓でもできるが・・・

電卓の場合、「1,000」、「×」、「1.03」と叩いたあと「=」をn回続けてたたくと計算できます。(※この操作は電卓メーカーにより多少異なります。「万」は略して計算してます。)

20回叩けば

1,806.11123(≒1,806万円)

と出てきます。計算の手順を理解しておればそう難しいこともありません。

やはりここは係数の出番!

一方、係数を使った計算は次のようになります。20年3%の終価係数は「1.8061」です。これは終価係数表を見ればわかります。こちらが終価係数表です。(下図参照)

表からほしい数値を拾い出す作業は、高校生の時に習った三角関数を思い出しますね。数学の教科書の後のページにいくつか乱数表のようなものが載っていました。ここでの計算は係数を掛けるだけです。

1,000万円×1.8061≒1,806万円

計算結果は同じですが、電卓を叩く時間が短縮できます。累乗の計算は電卓を使っても時間がかかるのです。また、叩く回数を数えておかないといけないので間違えやすいことも難点です。

ここで、ちょっと脇道にそれますが、

同じ3%でも「単利」運用ならばどうでしょうか。

1,000万円+30万円×20年=1,600万円

同じ年利3%、20年の運用でも単利と複利では大きな差が出ます。

もっと運用年数を増やしたり、利率の高い運用に替えればもっと差が広がります。上の表を見ればわかりますが、例えば同じ20年でも10%で運用すれば、1,000万円が約6,700万円になります。これが上記で述べた「想像できない世界」のことです。

べき乗(累乗)の計算が「想像できない世界」ということを表すためによく使われるトピックがあります。

コピー用紙を42回折り曲げたら月に届く!?・・・6つの係数(2)につづく。