社会保険に入れる人と入れない人

給料明細しっかり見てますか?けっこう引かれてますよね。税金と保険。給料から天引きされる「必要悪」といったところでしょうか。

正社員として働いている人は社会保険(厚生年金や健康保険など)に入っていて当然という感覚が大多数でしょう。ことさらに「どのような人が入れてどのような人が入れないか」などあまり考えないかもしれません。

それに対し、パートやアルバイトの人はどうでしょうか。社会保険に入っている人と入っていない人、どちらもいらっしゃいますから正社員よりもこのことには敏感だと思います。

給料から引かれるので「嫌だな」と思う人、「年金が増えありがたい」と思う人、受け止め方は個々の事情や考え方により様々でしょう。

社会保険料は会社側も支払いますので、経営側としては「できれば払わないで済ませたい」と考えるのも当然かもしれません。

強制加入が原則だが

入りたい人もいれば、入りたくない人もいる「社会保険」ではありますが、原則「強制加入」です。「損得」で決めるものではありません。

でも、身の回りには入っていないパート労働者が多くいますよね。入る入らないの境目はいったいどこにあるのでしょうか。その「線引き」について以下で見ていきましょう。順序を追って「仕分け作業」をしていきます。

繰り返しになりますが、大原則は「強制加入」です。一部、任意で加入することが認められる事業者もありますが、みんなでお金を出す前提で設計された制度ですから抜け駆けは困ります。

「強制」といっても働く個々人に強制されているわけではなく、会社(事業所)に対して義務付けられており、そこで働く人が「被保険者」となる仕組みになっています。この仕組みに入っている会社は「適用事業所」と呼ばれます。

まず、この適用事業所でフルタイムで働く従業員は全員が社会保険の被保険者です。

入るかどうかの線引きは?

次にパートタイムで働く人ですが、フルタイムの従業員と比べてどれくらいの日数・時間働いているかで振り分けられます。その境界が「4分の3」です。

1週間の所定労働時間および1か月の所定労働日数がフルタイムの人の「4分の3以上」であれば社会保険(健康保険・厚生年金保険)が適用されます。では「4分の3未満」の人は・・・。

「4分の3未満」であっても、次の5つの要件がすべて満たされている場合、社会保険の被保険者となることができます。

1)週の所定労働時 間が20時間以上であること。
2)月額賃金が8.8万円以上であること。
3)勤務期間が1年以上見込まれること。
4)学生ではないこと。
5)従業員数501人以上の企業に使用されていること。(500人以下の企業でも労使合意があれば適用対象となる)

例題

以上の知識で回答できるFP試験の過去問がありましたので引用しておきます。1級の過去問ですが上記の基本的なん知識があれば心配はいりません。

【以下、みどり色文字は2018年1月28日実施の金財1級FP学科試験〈基礎編〉の引用です。】

《問1》 次の労働者のうち、厚生年金保険・健康保険の被保険者となる短時間労働者の組合せとして、最も適切なものはどれか。なお、いずれも特定適用事業所に勤務し、学生ではなく、1週間の所定労働時間および1カ月間の所定労働日数が同一の事業所に勤 務する通常の労働者の4分の3未満であるものとする。

1)Aさん
2)Aさん、Bさん
3)Aさん、Bさん、Cさん
4)Aさん、Bさん、Cさん、Dさん

 

4人は、「特定適用事業所に勤務し」とありますので、この用語を簡単に説明しておきます。

先ほど労働時間がフルタイムの「4分の3未満」の人が社会保険に入るための5つの要件を列記しました。実はこの問題、この5つの要件だけで回答できる設問です。5番目の「従業員数501人以上の企業」この「特定適用事業所」にあたります。厳密な定義ではありませんが先ずは大きく理解しておきましょう。

また4人は「学生ではなく」と書かれていますので上記5要件の4番目もクリアです。

問題は1~3番目の要件で、それがちょうど表中の数字です。「20時間以上」「8.8万円以上」「1年以上」の3つとも見てしているのはAさんとBさんです。4人年齢が書かれていますが、この問題を解くにあたり年齢は関係ありません。2)が正解となります。

なお、賃金は勤務日数などはいつも一定ではなく、どの条件もいつもきれいに当てはめられるものありません。フルタイムの人の勤務時間も計算の仕方で変わります。個々のケースは役場、年金事務所、専門家に相談し計算してもらってください。