保険法と保険業法
保険法とは
「保険法」と「保険業法」
似たような名前の2つの法律、どう違うかをまずお話しいたします。
まずは保険法。
「保険」という商品は、スーパーで売られている野菜や果物とは違い、目に見えない、形のない商品です。そこで保険とは「どういう商品なのか」ということを定義して、法律をもって「形のあるもの」に仕立てる必要があります。そのための法律が「保険法」です。
保険法によって「生命保険」や「損害保険」がどういう保険なのか決められています。
保険法は平成22年4月の施行された新しい法律です。保険契約に関する一般的な契約ルールを定めたもので内容はシンプルにできています。
「保険」という商品自体はもちろんもっと昔からあったわけですから「今さら・・・」というふうに受け取られそうですが、実はこの法律、もともと「商法」の中にあった保険に関する規定を外に出したものなのです。
商法といえば、明治32年とうかなり昔の法で、憲法や民法とともに「六法」の一つに数えられる長老のような法です。いろんな決まりの元となるものですからシンプルなのは当然です。
制定から100年以上経ち、社会経済情勢も保険契約も変化し古い法律では対応できなくなってきました。そこで抜本的に改正され、保険法としてあらたに制定されたのです。
保険業法とは
こちらは「業」の1文字が加わるだけですが全く別の法律です。保険を「業」として営んでいるのは、保険会社や代理店、募集職員の人たちです。無秩序に契約を取るための営業活動を抑制するためのルールを定めたものです。
例題(保険法)
《問9》 保険法に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
2017年1月22日実施の金財1級FP学科試験〈基礎編〉より
ここでは「保険法に関する・・・」という書き方をしています。
もちろんこれは「保険法の内容に関する質問をしますよ」ということなのですが、このような書き方で始まる場合はもう一つ注意しなければいけないことがあります。
それは、「ほかの法律や規則と解釈が分かれる事例は保険法に書かれている内容で判断するように!」ということです。
不動産分野で、瑕疵担保責任について「民法」と「借地借家法」が比べられることは有名ですが、法律間の矛盾というのはしばしばあることなのです。実社会において、どちらの規定が優先するかは司法の判断によるのですが、あくまでここは「紙の上での試験」、「他の法律や特殊なケース、判例などは考えず答えてください。」という出題意図がふくまれています。
1)保険契約者または被保険者になる者は、生命保険契約の締結に際し、保険事故の発生の可能性に関する重要な事項のうち保険者になる者が告知を求めたものについて、事実の告知をしなければならないとされている。
2017年1月22日実施の金財1級FP学科試験〈基礎編〉より
正しい記述です。
正しい告知が契約の前提になります。ただし告知を求められていない事項は告知をする必要はありません。聞かれたことにだけ答え、聞かれていないことまで話す義務はないということを保険法ではっきりさせています。
2)保険金受取人が保険金を請求する権利および保険契約者が保険料の返還を請求する 権利は、時効により2年で消滅するとされている。
2017年1月22日実施の金財1級FP学科試験〈基礎編〉より
誤りです。
以下はこのことを規定した保険法の条文です。
第九十五条 保険給付を請求する権利、保険料の返還を請求する権利及び第六十三条又は第九十二条に規定する保険料積立金の払戻しを請求する権利は、三年間行わないときは、時効によって消滅する。
2年ではなく3年となっています。
3)生命保険契約の保険契約者は、被保険者の同意を得て、法律上有効な遺言により、死亡保険金受取人を変更することができるとされている。
2017年1月22日実施の金財1級FP学科試験〈基礎編〉より
正しい記述です。
以下はこのことを規定した保険法の条文です。
第四十四条 保険金受取人の変更は、遺言によっても、することができる。
2 遺言による保険金受取人の変更は、その遺言が効力を生じた後、保険契約者の相続人がその旨を保険者に通知しなければ、これをもって保険者に対抗することができない。
保険会社が契約通り保険金を支払った後で、遺言によって受取人が変更したことを申し立てても、保険会社がもう一度保険金を支払ってこれることはありません。当事者間で話をつけなければいけません。注意が必要です。
4)保険法の規定は、原則として同法施行日以後に締結された保険契約に適用されるが、重大事由による解除に関する規定は、同法施行日よりも前に締結された保険契約にも適用される。
2017年1月22日実施の金財1級FP学科試験〈基礎編〉より
正しい記述です。
重大事由とは、(1)わざと保険事故を発生させようとしたこと。(2)詐欺。(3)その他、「信頼を損ない契約の存続を困難にする重大な事由」と規定されています。 そして、これらの事由による解除が同法施行日よりも前に締結された保険契約に適用されることは、同法の附則第3~5条に謳われています。どれも非道徳的行為でありこれらの悪用を防ぐ意味で適切な措置ですので誰もが納得できるところです。