・・・前回(公的年金制度の遺族給付(3)~男やもめ)からのつづきです。
3)老齢基礎年金と老齢厚生年金を受給していた夫(70歳)が死亡し、障害基礎年金を受給している妻(67歳)が遺族厚生年金の受給権を取得した場合、その妻は、障害基礎年金と遺族厚生年金のいずれか一方を選択して受給することになる。
誤りです。「一人一年金」という公的年金の給付の大原則から逸脱しますがこの併給は認められています。
一人一年金の原則とは、給付事由の異なる2つ以上の年金を受けられるようになった時に、どちらかを選択しなければいけなという原則です。
「老齢基礎年金と老齢厚生年金」、「遺族基礎年金と遺族厚生年金」などの同じ目的の年金の組み合わせは一つの年金とみなされ、併せて受けることができます。
複数の年金を同時に給付すること(併給)は例外的な措置です。例外的な措置は結構複雑です。併せもらった場合、金額が減らされるというシステムも存在します。
まず、67歳の妻が先に受けていた「障害基礎年金」の概要を確認しておきましょう。受給できる人は国民年金に加入している人です。60歳以上65歳未満の国民年金保険料を納め終わっていて、まだ老齢年金を受給していない人も含まれます。この間の病気やケガで、障害等級表(1級・2級)による障害の状態になったとき障害基礎年金が支給されます。
2級の支給額は満額の老齢基礎年金と同じで年間約80万円です。1級はその1.25倍です。ケガや病気で障害が残りその生活を支えるための保険のような役割ですが、いずれはもらう老齢基礎年金を前倒しでもらえるようなイメージです。
この67歳の妻は障害基礎年金だけももらっているということですから、国民年金の加入者だったと考えられます。夫は老齢厚生年金を受けていたので、夫が会社勤めだったときに専業主婦で国民年金の第3号被保険者だったのかもしれません。300ヶ月(25年)以上厚生年金保険料を払っていた老齢厚生年金受給者の遺族は、遺族基礎年金がもらえます。この場合もそうでしょう。
この妻は障害が残り障害基礎年金をこの年でももらっていますが、普通に老齢基礎年金をもらっている一般的な同年齢の妻と年金面では同じポジションにありますのでこの併給は自然な流れだととらえられます。
4)平成29年8月1日以降、老齢厚生年金の受給権者の死亡を事由とする遺族厚生年金は、死亡者の国民年金の保険料納付済期間、保険料免除期間および合算対象期間を合計した期間が10年以上あり、かつ、一定の要件を満たす死亡者の遺族に支給される。
誤りです。25年(300ヶ月)以上が必要です。
平成29年8月1日以降、老齢基礎年金の受給資格を得るための保険料納付要件が「25年」から「10年」に引き下げられました。しかし、遺族年金を支給要件としての納付済機関は25年のままです。