・・・前回(公的年金制度の遺族給付(2)~中高齢寡婦加算)からのつづきです。

さて、前回ご紹介した遺族年金の例題のつづきですが、4択の最初の選択肢で正解肢が出てしまったのでここから先はすべて「誤り」ということになります。結果が出たのでここで終わりかと言えばそんなことは致しません。選択肢はひとつひとつが独立した「正誤問題」としてそれぞれ重要なポイントを含んでいますので順番に丁寧に見ていきましょう。

【今回もみどり色文字は2018年1月28日実施の金財1級FP学科試験〈基礎編〉の引用です。】

2)厚生年金保険の被保険者であり、その被保険者期間が384月である妻(50歳)が死亡し、その妻に生計を維持されていた遺族が夫(50歳)と子(15歳)の2人である場合、夫は遺族基礎年金と遺族厚生年金を受給することができる。

誤りです。夫が受給できるのは「遺族基礎年金だけ」です。

前回は厚生年金に入っていた夫が亡くなった場合でしたが、今回は逆です。厚生年金に入っていた「妻」が亡くなったという想定です。

50歳の夫が仕事をしているのか、どんな年金に入っているのかなど、そのあたりの詳細は語られていません。分かっているのは、子どもがいること、子どもとともに「妻に生計を維持されていた」という事実です。

2種類の遺族年金それぞれの受給要件を満たしているかどうか順番に見ていきましょう。

まず遺族基礎年金について。遺族基礎年金の受給対象は「子のある配偶者または子」ということは前回少し触れました。年金で「子」というのは18歳の年度末までです。(一般には高校卒業まで)

この子どもは15歳ですからあと3年程度は「子の加算」も受給できます。

つぎに遺族厚生年金です。受給資格者の範囲は遺族基礎年金よりも広くなる(配偶者および子、父母、孫、祖父母)のですが、これも前回少し触れましたが、男女で扱いが違いますので注意が必要なところです。夫が遺族年金を受けるには55歳以上でなければならないのです。よって50歳の夫には受給資格がありません。(子どもは受給できます。)

この逆で、亡くなったのが夫で、妻が残された場合であれば妻は年齢に関係なく受給できます。

男性の皆さま、不公平に感じますよね。前回もお話ししましたが年金の世界は建前より実態を重視する傾向があります。しかし、ここで感じた「不公平だな」という違和感を持つことが記憶の助けになります。感じた「違和感」を大切にしてください。

また、時代が流れ、男女の経済力にあまり差がなくなるなど、社会情勢変われば、さらに多くの人が違和感を持つことになるでしょう。そうなると次は制度のほうが変わる可能性も充分にあります。

実際、遺族基礎年金の受給対象者も平成26年4月に「子のある妻または子」から「子のある配偶者または子」と改定されてます。今後もこのような制度改正、法改正には注意しておきましょう。

このつづきは次回(公的年金制度の遺族給付(4))へ・・・