・・・労災保険の給付(1)からのつづきです・・・

例題

下記は1級の過去問です。順を追って説明しますので2級、3級を目指している人も心配はいりません。

【以下、みどり色文字は2018年1月28日実施の金財1級FP学科試験〈基礎編〉の引用です。】

《問2》 労働者災害補償保険の保険給付に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。

1)業務災害によって負傷した労働者が、やむを得ず労災指定病院以外の病院等で受診し、その療養にかかった費用を支払った場合、当該労働者は、療養の費用の請求により、支払った療養費の全額を受け取ることができる。

労災指定病院でなくても大丈夫

正しい記述です。

労災指定病院とそれ以外の病院の違いは何かというと、まさにこの問題文にあるようにお金のやり取りの方法が違うという点です。労働災害は労働者側の負担がないというのが基本です。ただし病院に行ってお金を払わずに治療を受けられるか、一旦立て替え後で返してもらうかが、かかった病院によって違います。

労災保険のお金の出どころは同じなのですが、病院が請求するか、自分で請求するかの違いです。労災指定病院の場合は病院が請求してくれるので自分で立て替える必要がありません。自己負担がないことには違いはありませんが、立て替える場合の注意点ですが、労災は健康保険が使えませんのでいつものように3割負担ではなく10割負担のなります。治療費が高額になると結構な負担になることも予想されます。立て替えずに済むというのはやはりありがたいシステムだと言えます。

ところで、この「労災指定病院」ってどこにあるかご存知でしょうか。

「〇〇労災病院」という病院の名前を聞かれたことがあると思いますが、それだけが労災指定病院だはではありません。厚生労働省のこちらのサイトから地元の労災指定病院を調べることができます。一度ご近所の病院を検索してみてください。馴染みの病院も結構入ってませんか。こうやって身近な病院を認識することで「労災指定病院」のリアリティが増しませんか?

頭で理解するだけでなくこのように手を動かすことも有効な勉強方法です。

通勤災害の事業主責任は?

2)労働者が通勤災害による負傷の療養のために欠勤し、賃金を受けられない場合は、休業4日目から休業給付が支給されるが、休業の初日から3日目までの期間については、事業主が労働基準法に基づく休業補償を行わなければならない。

誤りです。

先述のとおり、本来、労災の補償義務は使用者にあり、休業補償は事業主(使用者)の責任義務です。労災保険はその義務を肩代わりしてくれるのですが、働けなくなった初日から3日間くらいは事業主が本来の義務を果たすべきではないか、ということで、労災保険による休業補償給付は4日目からの支給となります。

しかし、この考え方は「通勤災害」には適用されません。

確かに労災保険は仕事による「業務災害」だけではなく通勤中の「通勤災害」も補償の対象にしています。ただし通勤途上の起こった災害にまで事業主が責任を負う必要はないと考えられます。よって労災の補償が受けられない初日から3日間の事業主による休業補償は定められていません。

休業補償給付→傷病補償年金

3)休業補償給付の支給を受けている労働者が、療養開始後1年6カ月を経過した日において傷病が治っておらず、当該傷病による障害の程度が一定の傷病等級に該当して傷病補償年金が支給される場合は、休業補償給付の支給が打ち切られる。

正しい記述です。

遺族補償年金の転給制度

4)遺族補償年金は、受給権者が失権した場合に次順位者が遺族補償年金の受給権者となることができる転給制度により、すべての受給資格者が資格を喪失するまで支給される。

正しい記述です。